次の文は,測量の誤差について述べたものである。 ア ~ エ に入る語句及び数値を埋めよ。
ア は,測定の条件が変わらなければ大きさや現れ方が一定している誤差である。一方, イ は,原因が不明又は原因が分かってもその影響を除去できない誤差である。このように測定値には誤差が含まれ,真の値を測定することは不可能である。
しかし,ある長さや角度に対する イ だけを含む測定値の一群を用いて,理論的に,真の値に最も近いと考えられる値を求めることは可能であり,このようにして求めた値を,最確値という。
ある水平角について,トータルステーションを用いて同じ条件で 5 回測定し,表 の結果を得たとき, ア が取り除かれているとすれば,最確値は ウ ,最確値の標準偏差の値は エ となる
測定値 |
45°22’ 25" |
45°22’ 28" |
45°22’ 24" |
45°22’ 25" |
45°22’ 23" |
解答・解説
誤差は下記のように分類される。
- 過失
⇒観測者の不注意によるもの。目盛りの読み間違い、データの記録ミスなど。 - 系統誤差(ア)
⇒温度、大気圧など測定条件に起因する誤差。このほか観測者の癖など、個人誤差も含まれる。 - 偶然誤差(イ)
⇒発生要因に特段の因果関係がないため,観測方法を工夫しても消去できないような誤差。
観測の最確値は、観測の重さをp、観測値をlとすると\(\mu=\frac{\sum_{i=1}^{n}p_{i}l_{i}}{\sum_{i=1}^{n}p_{i}}\)と表される。本観測は、すべての重みP=1なので、平均値の同等の考え方で、観測値の秒単位
$$\frac{25+28+24+25+23}{5}=25$$
以上より、最確値は45°22’ 25"(ウ)
最後に、標準偏差を求める。最確値の標準偏差は、\(\sigma_{0}^{2}=\frac{\sum_{i=1}^{n}(\mu-l)^{2}}{n(n-1)}\)で表される(※1)。このとき、nを観測回数とする。今回のケースで標準偏差を求めると
$$\sigma^{2}=\frac{(25-25)^{2}+(28-25)^{2}+(24-25)^{2}+(25-25)^{2}+(25-23)^{2}}{5(5-1)}=0.7$$
以上より、\(\sigma=0.836\)となり、最も近い値が0.8″(エ)となる。
※1. 標準偏差の求め方
何の標準偏差を聞かれているによって、使用する公式が異なる。定義からさかのぼって、最確値の標準偏差が求まる過程を以下に示す。
分散:誤差の2乗和の平均値⇒\(\sigma^{2}=\frac{\sum_{i=1}^{n}(l-X)^{2}}{n}\)
標準偏差:分散の正の正方根⇒\(\sigma=\sqrt{\frac{\sum_{i=1}^{n}(l-X)^{2}}{n}}\)
しかし、実際には、最確値μと観測値lから求まる残差を利用するため、観測1回の標準偏差は下記のように表される。
観測1回の標準偏差:\(\sigma=\sqrt{\frac{\sum_{i=1}^{n}(\mu-l)^{2}}{n-1}}\)
よって、最確値\(\mu=\frac{\sum_{i=1}^{n}l_{i}}{n}\)と求められるので、誤差伝搬の公式(※2)を利用して、最確値の標準偏差は下記のように求められる。
$$\sigma_{0}^{2}=n\times{\frac{\sigma^{2}}{n^{2}}}=\frac{\sigma^{2}}{n}$$
最確値の標準偏差::\(\sigma_{0}=\sqrt{\frac{\sum_{i=1}^{n}(\mu-l)^{2}}{n(n-1)}}\)
※2. 誤差伝搬の式(変数が一次式の場合)
$$Y=F(Xn)=a+ b_{1}X_{1}+b_{2}X_{2}+\ldots + b_{n}X_{n}$$
上記の式で表せるYの標準偏差σYは、Xiの標準偏差σxiで以下のように求めることができる。ただし、Xの変数は互いに独立とする。
$$\sigma_{Y}^{2}=b_{1}^{2}\sigma_{1}^{2}+b_{2}^{2}\sigma_{2}^{2}+\ldots +b_{n}^{2}\sigma_{n}^{2}$$
R4年度 測量士補 過去問解答
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No.25 | No.26 | No.27 | No.28 | 試験総評 |