電子基準点A,BおよびCを既知点とし、新点DにGNSS測量機を設置して観測を行った。その後、セミ・ダイナミック補正を行い新点Dの座標値を求めた。図は、既知点及び新点の位置関係とセミ・ダイナミック補正を行うためのグリッドを模式的に示したもので、図中の地殻変動補正量の矢印は大きさを誇張して表示した。
格子点0,P1,P2,P3と新点Dの座標値および地殻変動補正量は、表1,表2のとおりとする。また表中の座標値は(平成14年国土交通省告示第9号)に変換した値で、全点の標高は同一とする。
このとき、表2の空欄ア~エに入る数値をm単位で小数第3位まで求めよ。

表1.
名称 | 座標値(m) | 地殻変動補正量(m) | ||
X | Y | ΔX | ΔY | |
格子点P0 | +1,000.000 | +1,000.000 | +0.400 | +0.400 |
格子点P1 | +1,100.000 | +1,000.000 | +0.400 | +0.400 |
格子点P2 | +1,000.000 | +1,100.000 | +0.800 | +0.800 |
格子点P3 | +1,100.000 | +1,100.000 | +0.800 | +0.800 |
表2
名称 | 座標の時期 | 座標値(m) | 地殻変動補正量(m) | ||
X | Y | ΔX | ΔY | ||
新点D | 元期 | ア | イ | ウ | エ |
今期 | +1,055.000 | +1,060.000 |
解答・解説
(1)バイリニア補間法について
今回初出しの問題だと思います。親切なことにバイリニア補間法の概要を載せてくれています。ここではまず、バイリニア補間の概要を整理してみます。

- 長方形P0P1P3P2の各辺の長さを1となるように正規化する。
⇒各辺は、0~1の座標の比率で表すようにし、P0~P3を正方形化する。 - P0~P3の各点にそれぞれ値Z0、Z1、Z2、Z3を持つと仮定し、正方形P0P1P3P2内の任意の点PがとるZとする。
⇒P0~P3の各点に地殻変動量Z0、Z1、Z2、Z3を持ち、正方形P0P1P3P2内の任意の点Pがとる地殻変動量Zとする。 - 地殻変動量は、X、Y(軸)各方向に直線的な変化をする。
- x、yは、格子点内における点PのX、Y方向の値(0<x, y<1)
⇒点Pの座標(x, y)とする(0<x ,y < 1)
このとき、任意のPの地殻変動量Zを計算する。地殻変動量Z0~Z3を各点P0~P3の高さとし、下記のような立体上で任意の点Pの地殻変動量(すなわち、高さ)を求めることを考える。

まず、P02(0,y)とP13(1, y)の地殻変動量Z02、Z13を求める。地殻変動量ZはX、Y軸方向に対し、直線的に変化(すなわち、比例的に変化)するため、地殻変動量Z02、Z13は以下のように表される。

$$Z02=(Z2-Z0)y+Z0, \quad{Z13=(Z3-Z1)y+Z1}\tag{1}$$
さらに、Z02、Z13を用いて、P(x, y)の地殻変動量Zを求める。上記と同様にして、

$$Z=(Z13-Z02)x+Z02\tag{2}$$
上記(1)式、(2)式をまとめてZを表すと以下のようになる。
$$Z=(1-x)(1-y)Z0+y(1-x)Z2+x(1-y)Z1+xyZ3$$
(2)本問題の計算
上記の過程をなぞる形で、計算を行う。
① 座標を正規化する
問題のP0~P3、Pを0~1で正規化する。以下のように、正規化し0~1で表す。
名称 | 座標値(m) | 正規化 | ||
X | Y | X | Y | |
格子点P0 | +1,000.000 | +1,000.000 | 0.000 | 0.000 |
格子点P1 | +1,100.000 | +1,000.000 | 1.000 | 0.000 |
格子点P2 | +1,000.000 | +1,100.000 | 0.000 | 1.000 |
格子点P3 | +1,100.000 | +1,100.000 | 1.000 | 1.000 |
新点D(今期) | +1,055.000 | +1,060.000 | 0.550 | 0.600 |
② 地殻変動量ΔX、ΔYを求める
各格子点P0~P3すべてにおいて、地殻変動量ΔX、ΔYの値は等しい。よって、新点Dにおける地殻変動量ΔX、ΔYも同値となるので、ここではΔXの値を用いて新点Dの地殻変動量を計算する。
まず(1)式を利用し、D1(0、0.6)、D2(1、0.6)の地殻変動量ΔX1、ΔX2を求めると、

$$\Delta{X1}=(0.800-0.400)\times{0.600}+0.400=0.640\\
\Delta{X2}=(0.800-0.400)\times{0.600}+0.400=0.640$$
上記で求めたΔX1とΔX2を用い、D(0.550、0.600)の地殻変動量ΔXを求める。

$$\Delta{X}=(0.640-0.640)\times{0.550}+0.640=0.640$$
以上より、地殻変動量ΔX、ΔYは+0.640(ウ、エ)
③ 元期の座標を求める
今期の座標を元期へ変換する。地殻変動量(ΔX、ΔY)=(+0.640、+0.640)であるから、
$$X=1055.000-0.640=1054.360\\
Y=1060.000-0.640=1059.360$$
よって、元期の座標は(X, Y)=(+1054.360, +1059.360)(ア、イ)
(3)解答のポイント
- かみ砕いて考えると、中学数学で解ける問題である。文字で考えると難しいので数字を置くとわかりやすい。
- 立体を考えるとイメージがつきやすい。そして、一面ずつ平面で考えていく。
- 本問題では、すべての格子点の地殻変動が同じ座標など計算がしやすい問題設定となっている。次以降は、各座標の地殻変動量の値がバラバラなど、複雑なケースが出題されると考えられるため、原理を理解して問題を解けるようにする必要がある。
参考ページ
セミ・ダイナミック補正, 3. 概要と標準的な補正方法-国土地理院HP
R2年度 測量士 過去問解答
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