水準点AからEまで水準測量を行い,表の観測結果を得た。1 kmあたりの観測の標準偏差は幾らか。
路線 | 距離 | 往観測値 | 復観測地 |
A⇒B | 2.81km | +2.3057 m | -2.3039 m |
B⇒C | 0.92km | +1.7894 m | -1.7881 m |
C⇒D | 1.44km | +1.9993 m | -1.9998 m |
D⇒E | 1.48km | +1.8990 m | -1.8975 m |
解答
往復差から求める1kmあたりの標準偏差は以下のように立式される。
$$m_{0}=\sqrt{\frac{1}{4n}\sum(\frac{U_{i}^{2}}{S_{i}})}$$
m0:1kmあたりの標準偏差
n:鎖部数
Ui:各鎖部の往復差(km)
Si:各鎖部の距離(km)
上記の式を覚えていれば、表の値を用いて計算で求めることができるが、ここでは、上記の式の導入までかみ砕いて解いてみることとする。
下記のように、条件を整理する。
路線 | 距離(S) | 重み(P) | 往観測値(l_F) | 復観測値(l_B) | 閉合差(U) | 真値 |
A⇒B(1) | 2.81km | 1/2.81 | +2.3057 m | -2.3039 m | 1.8mm | X1 |
B⇒C(2) | 0.92km | 1/0.92 | +1.7894 m | -1.7881 m | 1.3mm | X2 |
C⇒D(3) | 1.44km | 1/1.44 | +1.9993 m | -1.9998 m | -0.5mm | X3 |
D⇒E(4) | 1.48km | 1/1.48 | +1.8990 m | -1.8975 m | 1.5mm | X4 |
標準偏差を求めるために、各要素の定義をする。標準偏差σと誤差εの関係は以下のとおりである。nは観測回数を表す。
$$\varepsilon_{i}=l_{i}-X_{i}, \sigma^{2}=\frac{\Sigma(l_{i}-X_{i})^{2}}{n}=\frac{\Sigma{\varepsilon_{i}}^{2}}{n}$$
ここで誤差εを用い、閉合差Uを求める。
$$U=\varepsilon_{Fi}-\varepsilon_{Bi}=(l_{Fi}-X_{i})-(l_{Bi}-X_{i})=l_{Fi}-l_{Bi}$$
上記式を2乗しA~E分まで総和を求める。そして観測鎖部数n(=4)で割る。ここで、各観測で観測距離が異なるため、重さp=1/Sを考慮することとする。
路線 | 距離(S) | 重み(P) | 閉合差(U) | \(\frac{U^{2}}{S}\) |
A⇒B(1) | 2.81km | 1/2.81 | 1.8mm | 1.153 |
B⇒C(2) | 0.92km | 1/0.92 | 1.3mm | 1.837 |
C⇒D(3) | 1.44km | 1/1.44 | -0.5mm | 0.174 |
D⇒E(4) | 1.48km | 1/1.48 | 1.5mm | 1.520 |
Σ×1/n | 1.171 |
$$\frac{\Sigma{\frac{U_{i}^{2}}{S_{i}}}}{n}=\frac{\Sigma{(P\varepsilon_{Fi}})^{2}}{n}+\frac{\Sigma{(P\varepsilon_{Bi}})^{2}}{n}-\frac{\Sigma{(2P\varepsilon_{Fi}\varepsilon_{Bi}})}{n}$$
ここで、\(\Sigma{\varepsilon_{Fi}\varepsilon_{Bi}}\)は、往観測、復観測ともに独立であるため0となる。
よって、
$$\frac{\Sigma{\frac{U_{i}^{2}}{S_{i}}}}{n}=\frac{\Sigma{(P\varepsilon_{Fi}})^{2}}{n}+\frac{\Sigma{(P\varepsilon_{Bi}})^{2}}{n}=2\sigma^{2}$$
以上より、片道分の1kmあたりの標準偏差σ(の2乗)は
$$\sigma^{2}=\frac{\Sigma{\frac{U_{i}^{2}}{S_{i}}}}{2n}$$
さらに、往復分は上記式の平均であるため、往復平均値の標準偏差σ_0は
$$\sigma_{0}^{2}=\frac{\sigma^{2}}{2}=\frac{\Sigma{\frac{U_{i}^{2}}{S_{i}}}}{4n}$$
よって、問題での1kmあたりの標準偏差σ_0は、
$$\sigma_{0}^{2}=\frac{1.171}{4}=0.2927$$
$$\sigma_{0}=\sqrt{0.2927}=0.54$$
以上より、1kmあたりの標準偏差は0.54mm/km(答)
解法のポイント
- 公式即代入でもいいが、標準偏差の意味を理解して立式すると覚えやすい。
- 慣れないうちは上記のように筋道を立てて考えていったほうがいい。
R2年度 測量士 過去問解答
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No.25 | No.26 | No.27 | No.28 | 択一総評 | 記述総評 | ||
2-B-2 | 2-C-3 | 2-D-2,3 | 5-A | 5-B-1 | 5-C-3 | 5-D-2 |