測量士・測量士補 分野別解説

【測量士・測量士補】土方カーブ式②:公式の導き方,証明方法

 こんにちは、マックの味付けが少し変わった気がします。気のせいでしょうか? 

 先日紹介した土方カーブ式は、便利な公式ですが、それが「どのように導かれるか」あまり紹介されていないと思います。ただ、使う身としてはわかっておきたいことですよね。今日は、土方カーブ公式を導入する手順を紹介します。

 土方カーブ公式については、こちらのページをご覧ください。

【測量士・測量士補】土方カーブ式①:公式と利用方法

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1. 中央縦線Mの公式

 まず、近似式を導入するにあたり、中央縦線Mの公式をおさらいします。中央縦線Mは、半径R、中心角Iを用いて以下のように求めることができます。

$$M=R-R\cos{\frac{I}{2}}=R(1-\cos{\frac{I}{2}})$$

$$M_{n}=R-R\cos{\frac{I}{2^{n}}}=R(1-\cos{\frac{I}{2^{n}}})$$

 二つ目の等式は、中央縦線Mの一般解で、弦長を等分した回数をnとしています。

2. 使用する近似式

 土方カーブ公式導入のために利用する近似式を紹介します。

① \(\cos{x}\)をマクローリン展開した形で表す

 マクローリン展開は、無限回微分可能なf(x)で成立します。

マクローリン展開

$$f(x)=f(0)+f'(0)x+f''(0)\frac{x^{2}}{2!}+f^{(3)}(0)\frac{x^{3}}{3!}+\cdots =\sum_{k=1}^{n} f^{(k)}\frac{x^{k}}{k!}$$

$$\cos{x}=1-\frac{x^{2}}{2!}+\frac{x^{4}}{4!}-\cdots$$

② 角度(ラジアン)を弧長と半径で表す

弧度法の公式

$$I=\frac{L}{R}$$

なお、ここではLを弧長とする。

③ 弧長Lを弦長Cとみなす

 角度Iが小さいと想定し、C ≒ L として扱います。

3. 土方カーブの導入

 以上3つの近似法より、土方カーブの公式を求めてみます。

 まず、上記①より、\(\cos{\frac{I}{2^{n}}}\)をマクローリン展開します。

$$\cos{\frac{I}{2^{n}}}=1-\frac{(\frac{I}{2^{n}})^{2}}{2!}+\frac{(\frac{I}{2^{n}})^{4}}{4!}-\cdots$$

 ここで、第3項目以降は非常に微小な数であるため、無視します。よって、

$$\cos{\frac{I}{2^{n}}}=1-\frac{1}{2}\times{(\frac{I}{2^{n}})}^{2}$$

 これを、中央縦線Mの一般解に代入すると

$$M=R(1-1+\frac{1}{2}\times{(\frac{I}{2^{n}})}^{2})=R\times{\frac{1}{2}}\times{(\frac{I}{2^{n}})}^{2}$$

 ここで、②よりIを弧長Lと半径Rで表すと

$$M=R\times{\frac{1}{2}}\times{(\frac{L}{2^{n}R})}^{2}=\frac{L^{2}}{2^{(2n+1)}R}$$

 最後に、③弧長を弦長で近似することにより

$$M=\frac{C^{2}}{2^{(2n+1)}R}$$

 n=1のとき、\(M1=\frac{C^{2}}{8R}\)となり、土方カーブの公式が導かれます。また、nが1大きくなると、Mの値が1/4倍されることも上記の一般式より明らかになります。

4. 土方カーブ式の近似が有効な場合

 上記より、土方カーブ式が有効な場合は、以下の時に限定されます。

  • 中心角Iが大きくないとき⇒近似式①③の差が小さくなる(特に③)。
  • 半径Rが大きくないとき⇒土方カーブ公式と中央縦線Mの差が小さくなる。

 実際に、中心角Iと半径Rを変化させて、土方カーブ式より求まるMと実際値を比較してみます。

1)半径R=10固定、中心角Iを変化させる

中心角 I(°) 半径 R 弧長L 弦長C 中央縦線M 近似式(1) 近似式(2)
15 10 2.618 2.611 0.086 0.086 0.085
30 10 5.236 5.176 0.341 0.343 0.335
45 10 7.854 7.654 0.761 0.771 0.732
60 10 10.472 10.000 1.340 1.371 1.250
75 10 13.090 12.175 2.066 2.142 1.853
90 10 15.708 14.142 2.929 3.084 2.500

近似式(1):\(M≒\frac{L^{2}}{8R}\)、近似式(2):\(M≒\frac{C^{2}}{8R}\)

※ 中央縦線Mとの差が2cm以上:オレンジ、中央縦線Mとの差が10cm以上: で示す。
※ 中心角は°、それ以外はm単位で表す。

 半径R=10のとき、中心角I=30°以下であれば誤差が1cm以内に収まります。交差点の巻き込み部を施工するには十分な近似です。それ以上の角度になると次第に差が大きくなっていき、近似式として利用するのが厳しくなってきます。

2)中心角I=30°固定、半径Rを変化させる。

中心角 I 半径 R 弧長L 弦長C 中央縦線M 近似式(1) 近似式(2)
30 10 5.236 5.176 0.341 0.343 0.335
30 20 10.472 10.353 0.681 0.685 0.670
30 30 15.708 15.529 1.022 1.028 1.005
30 40 20.944 20.706 1.363 1.371 1.340
30 50 26.180 25.882 1.704 1.713 1.675
30 60 31.416 31.058 2.044 2.056 2.010
30 70 36.652 36.235 2.385 2.399 2.345
30 80 41.888 41.411 2.726 2.742 2.679
30 90 47.124 46.587 3.067 3.084 3.014
30 100 52.360 51.764 3.407 3.427 3.349

近似式(1):\(M≒\frac{L^{2}}{8R}\)、近似式(2):\(M≒\frac{C^{2}}{8R}\)

※ 中央縦線Mとの差が2cm以上:オレンジ、中央縦線Mとの差が10cm以上: で示す。
※ 中心角は°、それ以外はm単位で表す。

 1)の中心角の変化に比べて、誤差が大きくなりませんが、Rが大きくなるにつれて、その誤差は無視できなくなります。

5. まとめ

  • 「土方カーブ式」は、①\(\cos{x}\)のマクローリン展開、②弧度法の公式、③弧長と弦長の近似により求まる。
  • 「土方カーブ式」の一般解 \(M_{n}=\frac{C^{2}}{2^{(2n+1)}R}\)より、\(M_{n+1}=\frac{1}{4}M_{n}\)が導ける。
  • 「土方カーブ式」が有効な時は、半径、中心角ともに小さいときに限定される。

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