こんにちは、10月終盤となり忙しくなってまいりました。最近、「賢い睡眠」に関する雑誌を立ち読みし、ショートスリーパー睡眠法を実施しています。
さて、今回は水準測量の誤差と消去法をまとめます。少し計算も出てくるので、ややこしいところもありますが、重要なところなのでしっかり見ていきたいと思います。以下の問題が、水準測量の誤差と消去法についてまとめられたので、そちらの解説を兼ねて、見ていきます。
1.例題
次のa~eの文は,水準測量における誤差とその対策について述べたものである。 ア ~ オ に入る語句は何か。
a.標尺の零目盛が正しくないために生じる誤差を零点誤差といい,レベルのすえつけ回数を ア にすることで消去できる。
b.レベルの鉛直軸が傾いているために生じる誤差を鉛直軸誤差といい,前後の標尺を結ぶ直線上にレベルを置き,三脚の特定の1本を常に イ に対向するように整置し観測することで小さくすることができる。
c.レベルの視準線と ウ が平行でないために生じる誤差を視準線誤差といい,前視・後視の視準距離を等しくすることで消去できる。
d.地表面に近づくと気温が高くなり大気密度が変化することにより視準線が屈折し生じる誤差を大気の屈折誤差といい,傾斜地において視準距離を エ し,地表に近い標尺の下方付近での観測を避けることにより小さくすることができる。
e.地球の曲率によって生じる誤差を オ による誤差といい,前視・後視の視準距離を等しくすることで消去できる。
(R元年度 測量士 No.12より)
2. 解答・解説
a. 零点誤差
標高のものさしである標尺の零目盛りがずれることで、生じる誤差を零点誤差といいます。標尺の下部が削れて、正確な零点を示せなくなるなどにより、生じます。
この誤差はレベルの据え付け回数を、ア偶数回 におすることで消去することができます。原理は下記の通り。

上図のように、2本の標尺を交互に用い、水準測量を行ったとします。2本の標尺とも、零点誤差が生じており、青標尺は+a、赤標尺は+bの誤差が生じます。
レベルの据付回数の代表として、4回目までの路線の高低差をそれぞれ求めてみましょう。
それぞれのレベル観測の値(誤差がない値)をB.S(n)、またはF.S(n)とする(nはレベルの据付回数)。高低差を求める式は、
{(B.S(1)+a)ー(F.S(1)+b)}・・・1回目据え付けの高低差。
{(B.S(2)+b)ー(F.S(2)+a)}・・・2回目据え付けの高低差。
{(B.S(3)+a)ー(F.S(3)+b)}・・・3回目据え付けの高低差。
{(B.S(4)+b)ー(F.S(4)+a)}・・・4回目据え付けの高低差。
(色分けは、上記の標尺の色と対応)
上記の和が、路線全体の高低差となるので、
Δh=(B.S(1)ー(F.S(1))+
(B.S(2)ー(F.S(2))+
(B.S(3)ー(F.S(3))+
(B.S(4)ー(F.S(4))+(2a-2a)+(2b-2b)
となる、下線部より、誤差a,bが高低差を求める際に消去されていることがわかる。なお、レベルの据え付け回数を偶数回にすると、起点と終点に立てる標尺が同じになります。
b. 鉛直軸誤差
レベル鉛直軸が傾いていることによる誤差を鉛直軸誤差といいます。この誤差を軽減するためには、三脚の特定の脚を常に イ同一の標尺に対向するように整地します。誤差を完全に消去することはできません。
図で表すと、以下のようになります。Ⅰ、Ⅱがそれぞれの標尺、●で示す脚を常に標尺Ⅰに向けて観測しています。

もう一つイメージを。今、レベルが●脚側に少し傾斜しているとき、上記の観測を実施したとすると、以下のようになります。

三脚を完璧に点対称に据えることはほぼ不可能であるため、完全に誤差を除去するところまではできません。
c.視準軸誤差
レベルが視準軸と ウ 気ほう管軸 が平行でないために生じる誤差を視準軸誤差という。視準距離を等しくすることで、両視準の誤差が等しくなるため、誤差を除去できる。

d. 屈折誤差(レフラクション誤差)
大気密度の変化により、視準線が屈曲することで生じる誤差を屈折誤差(レフラクション誤差)といいます。平地では、同程度の屈折により、誤差は消去されますが、傾斜地のように高低差があるところでは、誤差の大きさが、前視・後視で異なるため、無視できない誤差となります。

屈折誤差を小さくするには、以下の点に留意する必要があります。
- 視準距離を エ短く する。
(視準距離が長くなれば、屈折量も大きくなるため) - 地表近くを視準しない。
(地表近くでは、大気密度が高く、より屈折するため)
e. 両差(気差、球差)
オ球差 は、地球が球であるため、その曲率で生じた誤差をいいます。
一方、光の屈曲よる視準線誤差のことを気差といいます。
球差と気差を合わせた誤差を、両差といい、視準距離を後視・前視で等しくすることにより、消去できます。
イメージは下図の通り。

3. 参考ページ・過去問ページ
【測量士補・測量士】水準測量の原理①-レベル、標尺を用いた高低計算
【測量士補・測量士】水準測量の原理②:路線の高低差を求める
【測量士補 過去問解答】 平成30年(2018) No.10