1年も半分が過ぎ、折り返しに差し掛かっています。いかがお過ごしでしょうか。本日は、対回観測について説明していきます。測量士補を勉強してた当時、私はこの対回観測が全く分かりませんでした。なので、ゆっくりとかみ砕きながら説明していきます。
1. 水平角の観測方法

まずは、前の記事のおさらいです。
【測量士・測量士補】多角測量の原理①:新点を定める要素
【測量士・測量士補】多角測量の原理②:新点座標の計算
既知点から新点の座標を定めるには、新点までの距離と既知点と新点の間の角度(水平角)の観測が必要でした。
前の記事では、詳しく触れませんでしたが水平角の観測では、後視点を(角度測定器の)0°と設定し、時計回りを正方向として角度を観測します。

上の図が角度測定時のイメージです。後視点に0の目盛りを合わせ、時計回りの角度を測定します。A1の水平角は約110°と測定されます。
2. 対回観測の必要性
上記の観測結果を用いて、新点の座標計算をしておしまい・・・。と行きたいところですが、そうは測量屋は降ろしてくれません(笑)。
問題はいろいろありますが、ここでは主に以下の2点について、説明します。
- 角度測定器の目盛盤が偏って使用されてしまう。
- 器械が視準軸、水平軸がずれているとき、誤差が生じてしまう。
① 角度測定器の目盛盤が偏って使用されてしまう。
先ほどの、図をもう一度見てみましょう。

上記のように、新点A1を観測するとき、角度測定器の右半面のみが使用されており、左半分は全く使用されていません。よって、仮に右半面の目盛りが狂っている場合、正しい水平角は測定できなくなる、もしくは測定誤差が大きくなってしまいます。
もう少し詳しく図で見てみましょう。

後視点を0°に設定し、時計回りを正方向とするとほぼ毎回、目盛盤右半分を使用し、ほとんど左半分は使用しません。器械の目盛りは精密に作られていますが、若干の誤差は少なからず生じています。
目盛盤の右半分のみ使用する場合、右半分の目盛り誤差のみ測定に反映され、偏った測定結果が生じる恐れがあります。
② 器械の視準軸、水平軸誤差が生じてしまう。
こちらについては、また別の記事で詳しく書く予定ですが、器械の視準軸、水平軸などがずれていると角度の誤差が生じます。この誤差は距離に応じて大きくなります。
これらの誤差が生じているとき、1回きりの観測では誤差を調整することができず、距離に応じた誤差が毎回生じてしまいます。
器械誤差については、下記のリンクを参照してください
【測量士・測量士補】 器械誤差(水平角誤差)と消去方法についてまとめてみた。
3. 対回観測の手順
2. で触れた測定誤差を消去・緩和するために行うのが、対回観測です。どういう観測か下で見ていきます。
① 通常の観測を行う:正位(R)で観測

何回も同じ図で、怒られるかもしれませんが、最初は普通に観測します。このような状態を正位(R)と呼びます。(角度測定器の望遠鏡微動つまみが右側にある状態で観測するため、正位の状態をrightと呼びます。)
測量やったことない人は、この正位の状態が混乱を招くもとだと思います。上記の説明がわからない方は、正位の状態は「目盛り盤の右側中心に利用する」と理解しておけばいいと思います。
② 望遠鏡(目盛)を180°反転させる。

①の観測が終わったら、角度測定器の目盛りを反転させます。すると、(理論上は)後視点の目盛りが180°となります。
③ 反転した望遠鏡で後視点を観測する:反位(L)で観測

②の状態にしたのち、今度は角度目盛りを反時計回りに使用して、水平角を測定します。このような状態を反位(L)と呼びます。(角度測定器の望遠鏡微動つまみが左側にある状態で観測するため、反位の状態をleftと呼びます。)
測量をやったことない方は、「目盛盤の左側中心に利用する状態」を反位(L)と理解しておきましょう。
以上、①~③の一連の観測を対回観測といいます。上記の例では、正・反の1対回の観測で、最終的な水平角の大きさは2回の観測の平均が用いられます。
4. 対回観測の効果
最後に対回観測をすることによる、効果を見ていきましょう。
上で対回観測は、①目盛りの使用頻度の偏り、②視準軸、水平軸の誤差の消去を目的として行われることを書きました。それぞれの効果について、見ていきましょう。
①目盛りの使用頻度の偏りの解消
上記の例で、使用された目盛りの範囲を示すと以下のようになります。

対回観測をすることで、目盛盤まんべんなく使用され、片方の観測の誤差を小さくすることができます(完全には消去できない)。これらの観測の誤差は、倍較差、観測差など指標で評価がされ、測定の良否を判定・点検します。
倍較差、観測差については、また別の記事で触れましょう。
② 視準軸、水平軸の誤差の消去
下記のリンクを参照してください。
【測量士・測量士補】 器械誤差(水平角誤差)と消去方法についてまとめてみた。
5. まとめ
- 対回観測は、正位(R)と反位(L)で水平角を2回観測すること。
- 対回観測をすることで、①目盛りの使用頻度偏りの解消(目盛盤誤差の解消)② 視準軸、水平軸誤差などの誤差消去がされる。
- 正位と反位は望遠鏡の方向で名前が付けられる。わからない人は、観測盤面(目盛盤を、正位:右側中心、反位:左側中心に使用して角度を観測する)で理解しておくのが良い(輪郭との関係になるともう少しめんどくさくなりますが、とりあえず)。
6. 参考ページ
【測量士・測量士補】多角測量の原理①:新点を定める要素
【測量士・測量士補】多角測量の原理②:新点座標の計算
【測量士・測量士補】 器械誤差(水平角誤差)と消去方法についてまとめてみた。