測量士・測量士補 分野別解説

【測量士・測量士補】空中写真測量の計算問題をパターン別にまとめてみた。

 こんにちは、測量士・測量士補試験の合格発表までもう少しですね。測量士の人は、記述式の出来もありますので、まだどきどきしていることと思います。

 さて、本日は空中写真測量の計算問題をパターン別にまとめていきたいと思います。択一式問題で必ず1題は出題されます。確実に点数に変えるようにしましょう。

1.画像距離 ∽ 撮影高度を利用する問題

 写真測量の一番基本的な知識を使う問題です。前の記事にも書きましたが、以下の相似関係を利用するだけで問題を解くことができます。出題されたらラッキーと思える問題です。

 地表面からの高さ ∽ 画面距離
 地上画素寸法    素子寸法

〇 測量士・測量士補過去問

【測量士補 過去問解答】令和2年(2020)No.19
【測量士補 過去問解答】 平成29年(2017) No.18

【測量士 過去問解答】令和元年(2019) No.17

2. 写像の倒れこみ問題

 測量士補では、写像の倒れこみ問題が出題されています。こちらは、1.に比べ難易度が高く、少し理解がしずらい問題です。

 上記のように、画面距離f撮影高度Hで写真測量をするとき、高さΔhの煙突が撮影されたとします。このとき、撮影面に主点からr離れたところに煙突の頂点、そして煙突がΔrの長さで映り込んだとします。

このとき、煙突の高さΔhは以下の式により、求めることができます。

$$\Delta{h}=H\times{\frac{\Delta{r}}{R}}$$

上記の式は、△CAB ∽ △Opa△OAB ∽ △Oabを用い、それぞれで共有する辺ABより式を立式することで、導くことができます。

 しかし、着目する三角形が若干複雑で、イメージが湧かない証明になっています。上記の式は、要は、映り込んだ煙突の高さΔhと撮影高度Hの比は、主点から頂点までの距離rと像の長さΔrの比と等しいことを表しています。

 つまり、図で表すとこういうイメージになります。

 上図のように、撮影高度と建物の高さの関係が、写真面に投影されると横に倒れこんでいると覚えておくのがイメージも湧くため、よいと思います。

〇 測量士・測量士補過去問

【測量士補 過去問解答】 平成29年度(2017) No.20

3. 撮影写真の重複度に関する問題

 測量士の択一問題では、撮影写真の重複度を求める問題が出題されます。測量士補でも、近年重複度を求める問題が出てきています。

 重複度を求める問題でも、しっかりと図を描くことができれば、詳しい知識がなくとも問題を解くことができます。

 ある一定の基線長で写真撮影を行ったときの模式図を示しています。上図より隣接写真の重複度は、以下の特徴を持つことが分かります。

  • 撮影基線長(撮影間隔)は、隣接する写真間の非重複区間と一致する
  • 隣接写真間の重複度は、撮影高度により変化する。重複度は撮影基面(最低標高)で最大となる。

 上記のことを知っていれば、測量士補レベルの問題は解くことができます。

 測量士では、異なる標高間の重複度を計算させる問題が出題されます。こちらの問題は、三角形の相似関係より、以下の手順で求めることができます。

 ここでは、例題を用いながら説明していきます。下図のように撮影基線長500m、撮影高度2000mで、標高0m~500mの写真測量を行ったとき、重複度を最小50%する。このとき、撮影基準面(標高0m)の重複度を求めてみます。

① 標高500mの写真の範囲を求める。

 まず、△OA'B'のA’B'の長さ(写真の範囲)を求めます。重複度と撮影基線長が分かってますので、

$$500\times{\frac{100-50}{100}}=1000$$

と求めることができます。

② △OA'B' ∽ △OAB より、撮影基面の写真の範囲を求める。

 次に△OA'B' ∽ △OAB より、撮影基面の写真の範囲(ABの長さ)を求めます。それぞれの面の標高が分かっているので、三角形の比は、

△OA'B' :△OAB = 1500:2000 = 15:20

よって、ABの長さは、

$$AB=1000\times{\frac{20}{15}}=1333$$

③ 撮影基面での重複度を求める。

 ABの長さが求められたので、あとは重複度を出すだけです。基線長(非重複区間)は高度によらず一定であるため、ABでの重複区間は、

$$1333-500=833$$

よって、撮影基面での重複度は、

$$\frac{833}{1333}\times{100}=62.5%$$

以上のように、重複度の問題は公式を覚えるのではなく、三角形の相似の関係より一つ一つ手順を踏むことで、解くことができます。

※ 補足:画面の大きさについて

 重複度を求める問題では、画面の大きさと撮影基線の条件が与えられます。

【測量士】令和4年 No.19

 公共測量におけるデジタル航空カメラを鉛直下に向けた空中写真撮影を行うに当たり,標高が200 m から 600 m までの範囲にある土地を撮影範囲全体にわたって同一コース内の隣接空中写真間の重複度が最小で 60 % となるように計画した。撮影基準面の標高を 200 m とするとき,撮影基準面における同一コース内の隣接空中写真間の重複度は何%となるか。
 ただし,使用するデジタル航空カメラは画面距離 9 cm,画面の大きさ 14,000 画素 × 11,000 画素,撮像面での素子寸法 7 μm とし,画面短辺が撮影基線と平行であるとする。また,空中写真の撮影は等高度で,撮影基線長は撮影範囲全体にわたって一定であるとし,撮影基準面での地上画素寸法は 10 cm とする。

 黄色下線部の条件を用い、基準面での撮影範囲を求めることが想定されています。しかし、重複度を求める場合、割合で処理するため、実際の撮影範囲を求める必要はなく、比率で処理することが可能です。

 つまり、実際の撮影範囲と任意で置いた撮影範囲の割合がAとすると、上記③において、撮影基面での重複度は、正しくは下記のように立式されます。

$$\frac{833\times{A}}{1333\times{A}}\times{100}=62.5%$$

 結局Aが重複度を出す際に約分されてしまうため、画面の大きさの条件を使わず、任意の数値で計算が可能となるわけです。

〇 測量士 測量士補 過去問解答

【測量士補 過去問解答】 平成30年度(2018) NO.18
【測量士補 過去問解答】 令和元年(2019) No.19

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